2014年03月01日

木彫り雛のお話

あるお宅を訪問したときのことです。

「私たち再婚したんです。」と、言われて、事情がよくわからなくて、
「お二人とも再婚ですか?」などと間の抜けた質問をしてしまいました。

ご主人が進行性の病気で認知症と身体障害を合併、寝たきりのご主人を奥様が介護をされています。奥様の話は続きます。

40年連れ添ったあと、主人がこの病気になりました。
私はそれまで主人から「お母さん」と呼ばれていましたが、私のことがわからなくなりました。

嫁入りのときに持ってきた木彫りの小さなお雛様があるのです。私が生まれた時は終戦前で何もない時でしたが、親が探してくれたものです。そのお雛様を私が触っていると、

「これはお母さんのだから触らないでくれ」

と言うのです。靴も、タンスも「触らないでくれ」と言うんです。私がわからなくなった主人がかわいそうでかわいそうで。
それから、私は「お母さんは元気ですよ」と言って、私はもう一度主人と一緒になったのです。

そろそろ50年ですね。奥様はしみじみとご主人を見ながら話してくださいました。重症とわかって、ご自宅で最後まで過ごしたいと希望されて、退院してこられました。このご夫婦の間を妨げるものは何もありません。


もうすぐひな祭りです。玄関には木彫りのお雛様が飾ってありました。


1403木彫り雛.JPG
木彫り雛  静かに時を見つめているようだ
posted by 管理人 at 08:11 | Comment(0) | 日記
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