2011年05月26日

石巻市で行った泥だしボランティア

皆さん、お久しぶりです。

震災後2か月余りが過ぎました(震災時の当院の様子はテレマカシー28号をご覧ください)。なかなか書くことができなかったことをお詫びいたします。
皆さんにお伝えしたいことをこれからも書いて行きたいと思っています。手(グー)


さて震災から1か月余りたった、2011年4月16日土曜日のこと。

私は、石巻市で泥だしボランティアを行った。もともとその日は小児科学会があり休診にしていたが、学会自体が延期になってしまったのである。

現地に行きたいという思いはあったので、これは行きなさいということだろうと思った。しかし、医師として現地に行くのは簡単なことではない。
それは、医師は医療チームでないと活動が難しいことと、派遣チームに同行するには、普通は1週間、短くても3−4日という期間が必要だったからである。
当院のように医師1人でやっているところでは、それだけの期間を留守にはできない。

そこで、とちぎボランティアネットワーク(とちぎVネット)主催の日帰り泥だしボランティアに参加する事にしたのである。

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栃木から参加したメンバー

4月16日、まだ暗い3時30分にコンセーレ駐車場に集合。
大型バスに乗り込む前に、参加費3000円を支払う。このお金は、交通費、通信費、ボランティア保険などにあてられ、余ればとちぎVネットの事務局を支援する部分となる。4時に出発し宮城を目指す。

東北自動車道の事故処理で一部通行止めがあり、三陸自動車道は復旧渋滞のため到着が遅れる。石巻専修大学キャンパスに設置されている石巻ボランティアセンター(VC)到着が9時40分ごろ。
ここで、着替え、長靴、防塵マスク、カッパ、前掛け、手袋という泥だしスタイルになる。人によってはゴーグルを持参している人もいた。その日は風がとても強く、土ぼこり舞う突風が吹く天候だったので、確かにゴーグルがあるとよかったかもしれない。このボランティアセンターは、現地のニーズを把握して、ボランティアの割り振りをする役割を担っていた。

場所の確認が十分でなく、指示された場所につくまでに時間がかかった。
バスは、津波の被害を受けた市内に入っていく。道の端にがれきが積まれ、
営業を再開したばかりの店と、閉店したままの店が混在する通りを進んだ。

やがて、指定の場所に到着した。
今回の仕事は、釜・大街道地区にある「上釜会館」をきれいにすることである。
とちぎVネットから46人、他に日本旅行とさくら市役所チーム合わせて、
栃木勢60人のミッションだった。

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きれいになった上釜会館(左手のトラックのコンテナはどこからか流れついたもの)

ここは地区の集会所だが、あたりは津波の影響はいたるところにあり、
電柱が傾き、がれきは山のようになっていた。鉄筋コンクリート2階建ての会館は流されなかったが、1階の天井近くまで水が来たあとがあり、津波の凄まじさを改めて思い知った。1階の室内は泥だらけて、付近の住民は集会所の2階に避難をしたが、一時、身の危険を感じて屋上まで避難をした様子が2階の床に残る泥の足跡から見て取れた。
泥は建物の外と中に20cmほどたまっていた。

私達は、手分けして2階の床の清掃と、1階と外の泥だしに関わった。
自治会館らしく、子ども会、お祭りなどさまざまな書類が泥まみれになっていたが、それらはそっと運んで机の上に並べた。私のいた班は最初に2階の床の清掃を行い、後半は1回の外で備品だしや泥だしを行った。泥は水や油を含んで重い。これをスコップで土嚢につめ、大きくて丈夫なビニール袋(フレキシブルコンテナバッグ:フレコン)につめると、おそらく1つのフレコンで1トンくらいにはなるだろう。それを重機で運び出すのである。現地で重機の手配がなされていなかったらとても1日で終わらなかっただろう。

黙々と作業を行い、3時30分ごろには終了となった。
60人が1日がかりで1つの自治会館がきれいになった。翌日には高圧洗浄と
消毒をして、使用可能になるとのことで、自治会長さんも喜んでおられた。

大勢だったのでなんとか1日で済んだが、正直言って、これほどの人数が必要とは思わなかった。泥との格闘は予想以上に体力を要する。現地には、まだまだ手付かずの状態の住宅がたくさんある。この片づけを、被災された家人だけで、というのは無理である。

先発隊の報告を聞いたところ、個人の家に泥だしで入ったときは、私達がこれは処分するほうがいいだろうという家具であったとしても、家の人が「残す」と言えば残すのである。思い出の品かもしれないので、勝手に処分することはできない。ほどよい疲れを感じながら帰路につく。途中、サービスエリアで食事をとって、宇都宮に到着したのは23時ごろだった。

とちぎVネットは、6月15日までは、日帰りボランティアのバスを水、土、日曜日に運行する計画をしている。3−4日のボランティアも募集中である。現地にはまだまだ人手が必要で、とちぎから2万人のボランティアを派遣したいという壮大な計画が進行している。当日は、偶然、精神科ソーシャルワーカーをしているTさんと、宅配給食をしているKさんが参加していて、再会を喜び合った。ケアマネジャーのSさんもその後参加した。老若男女が参加しているのもこの日帰りツアーの特徴である。

もし1日でも行ってくださる人があれば、下記へ問合せをお願いしたい。

<申し込み お問合せ>
とちぎボランティアネットワーク
http://www.geocities.jp/tvnet1995/
電話電話028-627-5590


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石巻専修大学近くに自衛隊の基地があった

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道路わきにはがれきが積まれていた(石巻市内)

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堆積した泥には重油も混じり、臭いもある(石巻市内)


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付近にはまだ手付かずの建物もあった
posted by 管理人 at 10:00 | Comment(1) | 日記
この記事へのコメント

高橋せんせい

泥出しボランティアとはどんな作業なのかよく分かりました。想像以上の重労働なのですね。
私は、阪神と中越は取材したので、「東日本」は是非と願いつつ、家族事情という、いちばん困難な障害があっていまだに現地取材ができず切歯扼腕。髀肉之嘆の心境です。

取材対象は決まっていて、一つは石巻の「福祉避難所」の2箇所。看護協会の石井美恵子さんが作った画期的な施設です。
もうひとつ災害医療ロジスティック協会が開設した大槌町のノルウェー製診療所。アジア・アフリカの内乱や自然災害時の救援医療に使うユニット式の組み立て診療施設です。ヤンセンファーマの義援金と岩手県、ロジステック協会がノルウェー製品を輸入するという画期的な国際プロジェクトです。

いずれも、取材ルートがあるので、家族事情のメドがついたら、7月にも現地入りを果たしたいのですが、明日の分からぬ病院を抱えているため、見通しはついていません。

尾崎 雄
Posted by 尾崎 雄 at 2011年06月06日 22:53
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