2009年01月20日

末期がんの在宅緩和ケア その3:看取り

 ミチオさん(仮名・72歳男性 その1と2参照)は次第に衰弱していったが無事に
お正月も迎えることができた。やがてその時がやってきた。

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「看取り」
 年明け早々、訪問看護より連絡が入った電話。年末年始に微熱があったが落ちついてきたこと、食事は入らず、水分も充分でないという話があった。やがてある日の昼、訪問看護より「下血があります。血圧も60台です」と急ぎの連絡が入った。そこで訪問の予定を変更し、その日の午後に訪問した。
 ミチオさんは2人の娘さんに囲まれていた。すでに下顎呼吸といって末期に見られる呼吸だったが、挨拶すると「ご苦労様です」と返事があった。血圧はもう測れない状態だった。外出中の奥さんを呼んだ方がいいと声をかけて、私は次の訪問先へ向かった。
やがて再度連絡が入った。その日の夕方確認に向かった。ミチオさんはおだやかな顔で永眠されていた手(パー)

「在宅緩和ケアの調整」
 最期までその人らしく自宅で過ごすためのケアを「在宅緩和ケア」という。在宅緩和ケアの開始時にはさまざまな準備が必要だが、まず、本人が病状をどう捉えているのか、本人の希望はどうか、本人と家族の思いにズレはないか、介護の体制はどうか、など聴いて調整することが肝心である。末期がんの場合はそこに速さも要求される。当院で在宅緩和ケア開始時の調整のポイントを表に示す。語呂合わせで「カイコ ホケコ」という。
 ミチオさんの場合、「カイコ ホケコ」が何も整っていないのは無理もなかった。さらに役所は休みに入り、介護保険の申請は年明けになってしまい、結局調査が間に合わなかった。もしエアマットや介護ベッドが必要な場合には全額自費で借りることになっただろう。訪問看護もケアマネジャーも今回は当院から頼み込んだが、ほとんど病状の把握ができていない末期の方をこの時期から担当するのは受ける側としてはかなり厳しい話ではある。退院した病院も休み体制に入っていたので調整を依頼できなかった。


表  在宅ケア開始時の調整のポイント

カ 介護保険の申請
イ 医師(在宅医)の確保
コ 告知状態(がんや難病の場合)の把握
ホ 訪問看護の確保
ケ ケアマネジャーの確保
コ 後方病院(入院可能な病院)の確保

これらの調整がなされていると、在宅への
移行は比較的円滑に進むことが多い。

                      つづく

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 今回はいろんな条件が重なったとはいえ、退院調整や地域連携について考えさせられました。実際に目の前の家族が動くのを待つしかないのか。もう少しやり方はなかったのか、いや、きっとあるはずだと思うのです。多くの人が戸惑わないためにも。

posted by 管理人 at 01:57 | Comment(0) | TrackBack(0) | ホスピス
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