

特色は「行動展示」にある。つまり、動物の生き生きとした行動を見せるのである。そのためには、動物の生態を熟知し、動物が元気に動き回るようなしかけをする。しかし、野生動物は人が管理するのに都合のいい特性を持ち合わせていない。だから、管理する人間の都合に合わせれば野生の動物は、簡単に死ぬということで仕返しをする(戦う動物園:中公新書)。それを折り合いをつけて、動物も「ここなら楽しい」くらいにならないと、行動展示そのものは成功しない。
また、行動展示のため、人間が上や下に動き回って動物を観察する。やがて、動き回るうちに、動物

もぐもぐタイムというものがある。野生動物は食べるときにその特徴がよく表れる。それを見せるのである。ペンギンは魚を頭から丸呑みする、ホッキョクグマは飼育係が水中に落とした魚を豪快にダイブして食べる・・・。その様子に観客は歓声を上げる。お土産も結構買う。
さりげないところにもスタッフの想いがあふれている。ゴミひとつ落ちていない園内には、さまざまな案内板がありその多くが手作りかスタッフのアイデア満載のものである。普通の動物園にありがちな、◎◎、××産、身長○○なんて解説版ではない。
ヒグマのスペースに、「ヒグマに会わないためには」「それでも出会っちゃったら」「もし襲われたら」なんてギクッとしそうな表示があるとつい真剣に見入ってしまう。デジカメでとってきた画像を読み直してその案内板を再現しよう。なお、この案内板の漢字にはすべてふりがなが記してあった。
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森に熊さん
ヒグマに会わないためには
@ヒグマの生息地を知る

特に春の沢すじ
雪解け早草の地
秋のマス川 など
には近づかないことです
A自分の存在を知らせる

鈴でもいいのですが、鈴ではそれに対する
ヒグマの反応が聞きづらいという欠点があります
10秒間隔くらいで大声を出し(おいっおいっ)それに対する周囲の反応を聞きましょう
Bヒグマの痕跡を見極める

・足跡が重複 → ここに通っている!?
・新しいフン → すぐそばにいるかも!?
・人のゴミ入りのフン → 人を避けないかも!?
・大きさの違う足跡 → 親仔連れ!?
・シカの死体・泥まんじゅう(肉をうめて土が盛り上がっているところ)には近づかない
→エサをとられると思ってヒグマが飛び出してくるかもしれません。
・仔熊が木に登っている(危険回避の行動)
→木の根元には母グマがいます!!
「それでも出会っちゃったら」

あわてず
ゆっくり距離をとる
走って逃げない
基本的にヒグマは人を避けたいと考えています。絶対に刺激せず背を向けずにゆっくりと下がりましょう。
「もし襲われたら」

多くのヒグマは荷物など人以外に興味があります。
攻撃が止むまでうつぶせで腕で首をガードし、お腹と首を守る! リュックは防御になる。肘と足でふんばり、ひっくり返されてもその反動でもう一回転してください。
人自体に興味を示しているときは必死で戦いましょう

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できればヒグマには会いたくないものである

写真撮影は禁止されていないが、フラッシュは動物の目を傷めるため厳禁。しかし、オートでフラッシュがたかれてしまう現象は絶えず、スタッフが根気強く注意している。共存には、私たち人間側のモラルも問われるのである。これは、動物園に限らず、いろんなサービス業でも同じかもしれない。旭山動物園には動物が好きなひとばかりでなく、運営自体を学びにくる人たちも少なくないという。
旭山動物園と並び、市民の協働のもと、高いポリシーをもって運営されている動物園がある。北九州市の到津の森(いとうづのもり)公園がある。この2つの動物園の園長は盟友である。機会があればぜひ訪れてみたい
